Le Chateaubriandの評価のギャップはどこにある?

フランスバスク出身のイナキ・イズピタルト(Inaki Aizpitarte)のレストラン「シャトーブリアン」は、「世界のベストレストラン50」2011年度に9位に入ったビストロで、2015年も21位。
シャトーブリアンの、というか、イナキシェフの、コックコートを着ない、無精髭、素材の斬新な取り合わせ等々、いわゆる「ビストロノミー」と呼ばれるような料理や料理人自身の新しいスタイルは、フランスの「L’Express」誌に「Generation Inaki(ジェネレーション・イナキ)」と名づけられたほどだ(その時期2013年の記事がこちら→ L’Auberge du 15の守江慶智さんやAbriの沖山克昭さんの姿も)。

Le_chateaubriand_entrance

世界21位はフランスだけでいうと2位(アルページュ12位の次)だ。しかしミシュランでは星がない。両者、評価軸が全く異なるとはいえ、これだけ差が出るのはなぜだろう?
いずれにせよ、その理由を知るためには、実際に料理を食べてみなければ始まらないと思った。

お店を訪れたのは8月。
Azurmendiのさすが3つ星という料理を昼に味わった直後に入るパリである。
フランスは、ご存知の通り、8月のバカンス中に営業している店がほとんどない。
しかも今回はパリ到着が土曜の20時、そんな不利な条件下でも営業している貴重なシャトーブリアンの、21時からの予約不要2回転目に並んでみたが、そんな事情もあってかとにかく混んでいた。

隣接のウェイティングバーLe Dauphinで待ってて!と促され(最近パリで流行りの、隣の物件も買って、客は待っている間もお金を落とすシステム。よくできてる)45分、やっと私たちの順番が回ってきた。

料理は70ユーロコース7皿一本勝負。カルトなし。

客数はざっくり50名くらい。これをきっちり2回転させている。
店の内装は30年代からのビストロそのままということで趣があるが、この狭さと固い椅子に男女兼用のトイレ。決して居心地がいいとはいいがたい。

席間は相当に狭い。
そのテーブルの間をきびきびとサービスするスタッフたち。きびきびとというと言葉はいいが、これにうっかり腕や脚が当たったら惨事になりそうなスピードで、昼のAzurmendiとはまた別の意味で緊張感のあるサービスである。

カトラリーは料理の合間にホイホイと置いていく。
どうも「適度な”雑な”サービス」はこちらの特徴の一つであるらしい。レストランで肩肘張らないで楽しむ、を、サービスの人にも援用しちゃったというところか。

本日のメニュー
Amuse bouches
Encornet de St Jean de Luz,encre,liveche
Lotte de ligne,oignons
Poulette de la Cours d’Amuse,mais,beurre noiset
Cassis,angelique,feta
Tocino de ciero ou Fromages du jour

Le_chateaubriand_amuse

アミューズのパクチーのスープ、カシス味
おちょこサイズでかなり酸味がある。過去のブログなどの写真を検索してみると、この金属の器でひと口スープを出すのはデフォルトのようだ。
パクチーの味と合わせて、アジア風の演出がされているひと皿。

Le_chateaubriand_squid

イカとその墨、ラベージ
白いカリフラワーとイカにイカ墨でまぶされたハーブ。ラベージというらしい。肉厚で、食べ応えがある。この黒く汚した葉と、白いカリフラワーとイカのコントラストには意表を突かれる。

Le_chateaubriand_soup

グリーントマトとキュウリのスープ、オキザリス
オキザリスの香り全開。飾りだけではなく中にも入っているのか?北欧でここまで入れているのか、なんというか「エクストリーム・オキザリス」。スープをアミューズとここと、2品入れるのは毎回同じのようだ。

Le_chateaubriand_monkfish

モンクフィッシュ
付け合わせの玉ねぎはマリネしてある。色味が美しい。玉ねぎの新鮮さを強調する演出なのかはわからないが、生で出すには大きすぎかも。

Le_chateaubriand_Poulet

メインの鶏のロティ。
火入れと、コーンとそのヒゲの食感と味のバランスはさすが。
コーンのヒゲが付け合せとして新鮮に感じる。

アジアな部分や、北欧のエッセンスを取り込む柔軟性があって、しかしフランス料理という枠は外さない。素材をなるべくそのままに提供したい、言い換えればあまり手をかけない(ように見える)、ソースを使わない、アラミニッツ感、即興性を感じられる料理。

金属の器にパクチーや、ナスタチウムなどの葉を多用した盛り付けなど、海外の料理を思い起こさせるアイテムを自国の料理に取り入れるのは諸刃の剣だ。料理に新鮮さをもたらす反面、それを良く知る人間が見ると、そのアイテムの入れ方が中途半端であればあるほど突っ込みを入れたくなる。

総じて、どの皿も食材の取り合わせが新鮮で、かつフランス料理を食べたという満足感がある。
「フランス料理とは新しい食材の組み合わせで、楽しさと驚きをもたらすことだ」というイナキの意図が伝わって来る料理だ。
そのジェネレーション・イナキとまで呼ばれた新しさの伝播力こそが、ベストレストラン50の上位をいまだキープしている理由だろう。それは今はレストランのあり方として貴重な価値だ。

ただ、じわじわ値上げされてコース70ユーロ(約9,500円)となった現状では決してビストロ価格とはいえず、取り合わせの新鮮さだけでは足りないと言われる時期も来ると思う。
その手段の一つはたぶん料理の精度。
この日イナキは不在だった。不在でかまわないのだが、流れ作業で出される料理の精度が、できるならば、料理雑誌の写真で見られる精度まで引き上げられればと思う。

…と文句を言いながらも、やはり何か新しいことが展開されていそうな予感をもたせ、また行きたいと思わせるレストランである。

Chateaubriand/シャトーブリアン
129 av. Parmentier 75011 Paris
Tel. 01.43.57.45.95
19:30~23:00 日・月休
予約は21日前から電話で。15:00~19:30の時間のみ受付。


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