nomaの進化が止まらない

noma_entrance2016

「ついに出来ちゃったんですよ」

見慣れた風景が一変していた。
店の前に、橋が出来ている。

noma_bridge

もう何年も建設途中になっていた、歩行者・自転車専用の桟橋だ。
nomaのある島部分・クリスチャンハウンと、対岸の街中心部を繋いでいる。

日の長い夏のコペンハーゲンの夕暮れを歩く人たちで、桟橋付近はにぎわっていた。
nomaに隣接する姉妹レストラン108にも、新たに人の流れができていた。

橋は市民に歓迎されているように見えた。
しかし、nomaにとってはそれは吉だっただろうか?

    *    *    *
今回のデンマーク行きは、nomaの予約が取れたところから始まった。
私自身は2012年、2015年、今回が3回目の訪問となる。

nomaは今年いっぱいでの一時閉店(実際の閉店は少し延びるらしい)を発表している。
そこで、昨年nomaに参集したメンバーを中心に予約にトライした。
最初はオンライン予約上限7名のテーブルをおさえ、その後2Fの個室が取れたことから追加募集が行われた。
当日は日本から、或いは欧州在住者も含めて、最終的に15名がこの大きな長テーブルに集合した。

noma_dining2F

個人的には昨年の訪問から1年しかあいておらず、しかも時期も同じ8月で、食材の季節的重なりのことなども考えなくもなかった。しかしそれは全くの杞憂だった。それどころかさらに進化していた。ラディカルに。

Menu

Rhubarb and seaweed

Vegetable platter;
flatbread & ant paste
pickled quail egg
a black currant berry

Radish pie
Grilled baby cucumber, summer herbs and cream
Bread with cow’s milk butter
Fresh milk curd, green strawberry and goose tongue leaves
A light stew of fruit and vegetables
Lobster, lavender and rose oil
Crisp of wild roses and Danish peas
Steamed king crab and egg yolk sauce
Charred greens and scallop paste
Turbot grilled on the bone with sweet shrimp

A dessert of sheep’s milk and ant paste
Grilled rose ice cream and elderflower
Moss cooked in chocolate
Cep mushroom
Egg liqueur
Wild berries

料理は昨年からさらに複雑化している。
食材は北欧のものをという開店当初からのマニフェストは堅持されているが、それ以外の要素はどんどん変えていくという大きな流れを感じる。

今回もまた、新しい試みを加えた料理になっていた。
新しい試みを生んだものの一つは、今年2月に行われたnomaのシドニー移転だ。
2015年の8月訪問のときは、その年の1~2月のnomaの東京移転で得られたアイデアが料理に取り入れられていたが、今回も同じだ。

レストランの本質が、(時代に寄り添う変化はあるにせよ)伝統にのっとり同じ料理を出し続けることだとするならば、nomaはもうレストランではないかもしれない。

noma_king_crab

Steamed king crab and egg yolk sauce
タラバガニ、卵黄、肉醤。
シドニーで出されたという料理。
ソース部分のうまみが濃い。カニでこんなに濃くうまくていいんだろうかという味。
味は蟹味噌に似ていて、しかもベースが肉なので微妙にそこからずらされている。
このソースは魚醤ならぬ肉醤。オーストラリアではカンガルーの肉を発酵させて肉醤を作っているのだそうで、その発想を応用したものなのだそうだ。

麹・発酵関連のうまみ全開なのも今回の特徴。
かなりの料理に使われている。

noma_rose_ice_cream

Grilled rose ice cream and elderflower
大麦の麹のアイス、薔薇の花。
デザートのひと品。
大まかにいえばバニラアイスのような味。でも複雑さが違う。麹を冷凍してこうなるのかな。このうまみは麹のうまみなのだろう。
ジャムのようなものが中に入っていたような。それがエルダーフラワーだったかもしれない。
薔薇の花は香り付けだったか、複雑な2種の花の香りがするアイス。
ネットで写真を探すと、これもシドニーで出されていた。

noma_danishpeas

Crisp of wild roses and Danish peas
グリーンピースとタイムの花。
下は発酵させた生地らしい。ライ麦パン系の香り。薄いので、食べるそばからほろほろと崩れていく繊細な食感のスナックだ。生地が厚かったら花と豆の繊細さが出ないだろう。

noma_caviar

A light stew of fruit and vegetables
こんぶ、かぼちゃ、薔薇、フィンランドのキャビア、麹のソース
これは昨年も出たかぼちゃの料理の進化形。
麹のソースの存在感が圧倒的。だけど載っているのがキャビアと薔薇、味も香りもさらに特徴のあるものが載っていて負けていない。
これで三者がけんかせずまとまっているのが不思議。うまみがつないでいるのか、よくわからなかった。

今回の特徴としては、酸味のバリエーションの豊かさだ。


北欧では柑橘類が採れない。その部分を別の酸味で補うとどうなるかという例。
柑橘類がないと酸味はこれだけバラエティを持てるのかと、逆に羨ましくなる。

noma_rhubarb_and_seaweed

Rhubarb and seaweed
これは食材そのものが酸っぱい、あるいはマリネしたもの。
ビーツと酸葉、強い酸味×酸味の組み合わせ。薔薇の花はビーツだったはずなので、リュバーブはどの部分だったか失念。味はリュバーブと酸葉だった。
中和するのは薔薇のオイルとナッツ系の2種類のオイル。
ちなみに中央部分が薔薇の花に見立てられているので、薔薇のオイルで香りも近付けているという仕上げ。

noma_greenstrawberry

Fresh milk curd, green strawberry and goose tongue leaves
羊の自家製チーズ、3日間火を入れたこんぶ、グリーンベリー(まだ青いいちご)のソース。
これは「まだ熟れていない」という過程を酸味として使っているもの。
東京でもグリーンベリーは使われたらしい。日本のイチゴ農家さんは、甘い熟れたイチゴを出荷することにこだわるので(当然だ)、まだ熟れていないものを期間中継続的に出荷してもらうのに苦労したそうだ。

noma_ants

A dessert of sheep’s milk and ant paste
そして酸味に昆虫を用いているもの。
nomaで酸味といえばもうアイコンになった感じもする蟻。
ヨーグルトアイス、ソースが写真では見えにくいけれど緑と黒の2種かかっていて、緑が山菜のソース、黒が蟻のソース。
蟻のソースは黒糖を合わせて煮詰めてあるらしい。
じゃりじゃりした食感。黒糖なのか蟻なのかもはや判別できない。
今回初めて、蟻酸のほのかな酸味が、話題づくりやゲテモノでなく、食材として認識できた気がした。

nomaでは、新しい味(調味)の製作や発酵などの調理方法を、日本やシドニーに限定店舗を開業した経験やそれらの土地の食材などから貪欲にヒントを得て、新しい料理を作成していっている。
その中には北欧の伝統的な調理法なども入っているはずだが、残念ながら私にはその知識がない。
ただ現時点では、北欧の食文化を掘り起こす縦軸方向に深化するよりは、各国料理のエッセンスを取り入れるという横軸の方向へ広がっているような感じを受けた。

ありていにいえば、ラボがあって、調理の人数がいないとできない仕事だ。
薔薇は栽培ではなく採集に行くのだそうだ。それだけの情熱をもったスタッフがここには大勢いる。
その環境は、料理の進化にフルに生かされているように感じる。

2012年に初めて訪問した時の料理を思い出すと、思えば遠くに来たもんだ…という感じだ。
最初の訪問時の2012年(それでも開業から12年経っている)には、現地の食材をシンプルに調理してそのおいしさを提示するような料理だった。

P1010578

(2012年訪問時の料理。松の芽なども使われていた)

ノーマの皿は、テクニックや斬新さを強く主張してはいない。とてもナチュラルでシンプル。その中に繊細な味のスペクタクルがあり、山の湧き水のような清涼感がある。ひとつひとつの味わいに、北の素材の香りを引き出し、軽やかなハーモニーを生み出すための調味、とりわけデリケートな酸味の使い方に気づかされる。
(別冊専門料理「SPECIALTIES 2011」)

今回nomaにご一緒してくださったかたは、すでにnomaの料理がこの5年前の批評から今はもう遠く離れた地点まで来ていることに同意してくださるだろう。

noma_staff

料理はシンプルなものから複雑なものへ。
ダーウィンの進化論的に発展していくレストランという「生物」の次の行き先は、分化だ。
    *    *    *
今回せっかくなので、新店舗と農園ができるという、クリスチャニア地区の次のnomaが営業するという農場兼建物を見に行った。

noma_Christiania2

(内部から撮影)
お店から徒歩15分。
細い道路と、林と、運河に接した、今はがらんとした、廃材とゴミとほこりと落書きだらけの廃屋。
平たい屋根部分にはなぜか、テントで人が生活していた。
なんというか、自由な無法地帯だ。

noma_Christiania1

すごいね。
この場所がnomaの次のステージとして選ばれた理由が何となくわかる気がした。

ここから、次の新しい何かが生まれる。

noma_twilights


noma
Strandgade 93
DK-1401 Copenhagen K
http://noma.dk

予約サイト(→こちら 毎月上旬に3ヶ月後の1ヶ月分の予約受付)
予約方法(→2015改訂。拙ブログ内記事どうぞ

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