ブログ「食べログの口コミに見る人間心理 麻薬と性とトラウマと」が読まれた理由

先日のポスト(《レビュー》フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠)に関連して教えて頂いた記事をツイッターで紹介したところ、強い興味・関心を持って読まれたかたが多くおられたようだ。

まだ読んでいない方のために簡単に説明すると、この記事「食べログの口コミに見る人間心理 ―麻薬と性とトラウマと―」は、食べログに投稿された全口コミの約1/2、約300万件を集計し、レビュアーのプロフィールや店の属性(性別、年齢、使った金額、評価)で切って分析した考察だ。

食べログの口コミに見る人間心理 ―麻薬と性とトラウマと―
記事リンク

データ

高評価・低評価の口コミに関連する単語
5つ星の口コミに関連する単語
1つ星の口コミに関連する単語

女性・男性の口コミに関連する単語
女性の口コミに関連する単語
男性の口コミに関連する単語

食と麻薬
(筆者注;食を麻薬のように表現することについて)

食と性
(筆者注;食を性と係わり合いを持つ語で表現することについて)

口コミとトラウマ

終わりに

参考文献
———–
内容はリンク元を参照して頂くとして、興味深かったのは記事内容そのものももちろんのこと、その記事に強く興味を示す人が多かったことだ。

「めっっっっっっっちゃ面白い」
「長いけど興味深かった」
「労作」
「素晴らしい調査!」
「二郎 実に 脂」(笑)

「データエンターティメント」と書いているブログもあった。
この記事は、なぜここまで読む人の興味をひきつけたのだろう。

考えられることの一つとしては、集計されて多い順に並べられた「男性の(女性の)口コミに関連する単語」の「あるある感」かもしれない。つまり、食べログ読者が「ひょっとしてそうなのではないか・・・」と思っていたこと、例えば、

予想通りではあるが、女性の口コミでは「おいしい」、男性の口コミでは「うまい」という表現が使われるようだ

「ラーメン屋は『男性が入る店』」、また「女性はおしゃれなカフェでお茶をしたがる」といったステレオタイプ

というような漠然と考えていたことが、客観的事実として目の前に提示されたところにあるのかもしれない。

ある書籍などのまとまったものから言葉を抜き出して多い順に並べる計量分析は、源氏物語などの研究が進んでいて、そのテキストが重きをおいているものが何かが客観的にわかるものだ。それを食べログでやった記事の筆者は(もちろんアメリカの口コミサイトYelpの先行研究があったにせよ)すごいものを提示してくれたと思う。できることなら男女比だけでなく、金額ごとに抽出してみたいと思った。1,000円以下の店の口コミと、30,000円の店の口コミでは、内容はおのずと変わってくるのではないかと思う。

食べることを麻薬や中毒のように表現することについても言及されている。

麻薬の例えはあらゆる食べ物に対して用いられるわけではなく、甘いもの、脂っこい食べ物、炭水化物などのごく一部の食べ物にのみ適用される。きちんとした食事ではなく、健康に悪く、また比較的安価で、食べると罪悪感を抱くようなものを麻薬に例えることは非常に道理にかなっている。
(「食と麻薬」より)

糖は強迫的に「もっと摂りたい!」という興奮を引き起こすし、脂は「これ以上はいらない」というポイントが身体にない。自制に抗えずにB級グルメやカロリーの高いお菓子を食べているという無意識の感覚が、「麻薬」「中毒」ということばに表れているのだろう。

余談ながら、口コミで多く使われている語をながめていると、レビュアーの自意識のダダ漏れが多くてしみじみすごい。口コミで使われている代表的な「名詞」が「私 友達 夫 旦那 女子」、「僕 妻 客 自分 俺 店主」である。食べログレビューを思わずそっ閉じしたくなってくる。

レストランの批評において、食べログの一般の人の口コミとプロのライターのどこが違うかといわれれば、それは、上記の語を入れるか入れないか、ではないかと思う。
レストランの批評で主観を排するのは難しいし、「ネガティブな事項は具体的に書けるが、褒めることばは肯定的で漠然とした表現」になりやすい。そこを自分のことばで、文章で表現できるのがプロなのだろう。


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