巴蜀(福岡・月隈)未来の懐かしさ

ブログのデザイン変えました。
いつも読んで下さるかた、ありがとうございます。
びっくりさせてスミマセン。
文章がすごい地味なのでフォントと写真ぐらい大きくしようかなと…
これから少しずつ以前の記事も修正していきます。

トップ画像については、場所が分かる人は「アンタも好きねえ」とニヤッとしていただければと!
種明かしが次回かその次くらいのエントリで登場すると思います。

管理人夏休みに入りますので、しばらく不定期更新になります。
むしろ更新が頻繁になるかも。
今後ともお付き合いください。
————–

懐かしさという感情は、料理を食べるときにどれくらい入りこんでくるものなのだろう。

私にとっての懐かしい料理の一つは、70~80年代初めの中華料理だ。「中国料理」ではなく、日本で独自の発展を遂げた「中華料理」。

子どものころいつも、母に連れられて長崎の祖母の家で夏休みを過ごした。
祖母が必ず一度は出前でとってくれたのが近所の中華料理店の皿うどん。細く揚げた茶色い麺だ。
福建料理にルーツをもつ、味が比較的淡く、とんこつ系やオイスター系の白い色が基調の料理。
オーバル皿に盛りつけられた4人前くらいありそうな巨大な皿うどんの山を、子どもの私は端っこから崩してもらって食べるのが好きだった。

今回の「巴蜀」は、福岡空港からクルマで15分。福岡空港前を通る路線バスでも、最寄りの月隈団地まで行ける。
走り初めて5分の風景。空港南東部の住宅地だ。
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今回は特別にお願いするつてがあり、コースを組んでいただいた。

前菜
よだれ鶏、ゆばの香料煮、カシューナッツあめがけ、茄子の焼き唐辛子風味、牛肉のパリパリ揚げ、南瓜の塩卵炒め
米風塘明【虫下】車エビの米炒め
農家豆酥魚 アカハタの蒸し物大豆風味
酸湯肥牛肉 黒毛和牛発酵唐辛子煮
【虫下】子云呑麺 えび卵入りあえそば
冰粉 四川伝統の黒糖ゼリー
四川きなこもち

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最初のひと口はよだれ鶏から。
いいなあ。
中華でもフレンチでも、最初のアミューズのひと口でこのあと2時間の楽しさは約束されたと瞬間的にわかる、あの「いいなあ」の感じ。ここでピンと来なかったけどメインは良かった…ということはほぼ、ない。

花椒や油の華やかな香りは比較的ひかえめで、素朴な感じに仕上げてある。
とすぐ思ったのは、麻布十番・瓢香のインパクトのあるよだれ鶏を、1週間前に食べたばかりだったからかもしれない。
どっちがよいというのではなく、もう好みの問題だけ。

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前菜は香港の前菜に似ている。南瓜のひかえめな甘みに、アヒルの塩卵がこんなに合うのかと驚いた。香港の月餅や饅頭の塩卵より、甘味の繋がりに納得感がある。

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車エビの米炒め。
油で揚げるひときわ高い音が厨房から聞こえて、しばらくして出てきたのはこれだった。
コメを瞬間で揚げて、花椒とクミンで香り付けしてある。ポップコーンのような軽さで油を感じない。エビは殻ごと頂ける。

シェフの荻野さんは、四川省で修業経験がある。帰国後、北九州の台湾料理店「欣葉」でも働いておられたそうで、料理は四川料理と台湾料理主体だ。ちなみに、巴蜀とは四川省の別名。

今回は見たところベースが台湾系でまとめてくださったような感じ。
他の人のブログ写真などを見るともっと四川寄りの麻婆豆腐や担々麺だったり。そのときの流れや食材によって自在に変えておられるのだろう。複数の料理をお一人で作れるからこそできる、現地では決してお目にかかれないいいとこ取りとも言える。

麺も担々麺ではなく、蝦仔と雲呑の撈麺を思わせる淡い味のが出て来た。
日本で蝦仔麺が食べられてこれも個人的に感涙。また香港に行きたくなった。

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アカハタの蒸し物大豆風味。
一人で一尾まるごとハタの蒸し物が頂ける幸せ!
ハタの蒸し物は香港などでは清蒸にして、お祝い事などのときに、食卓の中央を飾る華やかな料理だ。
くさみが出ないように、〆てすぐに調理する。高級料理店だと生簀に泳がせてあるのはそのためだ。
今回の場合は、前日に〆て、味をなじませるために1日寝かせたのだそうだ。

調味は荻野さん自家製の豆酥(ドウスー)。
四川の農家で食べられている簡易版の豆豉である水豆豉(スイトウチー)を作り、それを乾燥させて揚げて作るらしい。日本では入手できないので自作されているとのこと。
このような、現地でももう作られなくなったような調味料や料理、特に80年代以降くらいのものを復活させることに情熱を注いでおられると聞いた。
清蒸のような華やかさの代わりに、発酵系のまろやかなうまみがある。

初めて食べる料理なのに、懐かしさを感じるのはなぜだろう。
四川のぴりっとした唐辛子の辛さより、もっと穏やかな胡椒が全体をまとめているからかもしれない。それが何となく昔の中華に通じるのかもしれない。
いわゆる家常菜的な感じ。家常菜をここまで極めて出してくれるところはちょっとなかなか考え付かない。
食べながら思い出したのが、7年くらい前に北京で食べた、「厲家菜 羊房胡同11号」の味。六本木ヒルズにあった支店は、写真では相当華やかな感じの料理に見えたが(結局行けずじまい)、北京の本店は、胡同の古くて小さな店構えそのままの、家常菜を極めた感じが強く印象に残った。

今回作っていただいた料理は、辛さがひかえめで、きらきらしたところがなく、色合いは地味でも滋味深いものばかり。
きらきらした輝きの代わりにあるものは、初めてなのに懐かしさを覚えるやさしさだった。

荻野さん、今回はありがとうございました。
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四川料理 巴蜀 (しせんりょうり はしょく)
福岡市博多区東月隈4-2-11-3
TEL092-503-8849
定休日 火曜日、第3水曜日
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