11月27日(火)、13年目のミシュラン東京2020年版が発表になった。
対象地域は昨年と同じ東京のみ。すべて東京23区内。(都下は無し)
横浜・川崎・湘南地区はこのたびwebでも掲載・更新を終了した。(後述)
全店リスト検索(ぐるなび海外版)
http://gm.gnavi.co.jp/restaurant/list/tokyo
ミシュランタイヤ株式会社のプレスリリース
https://media.michelin.co.jp/ja/2019/11/26/pr191126/
軒数は以下の通り。(カッコ内は昨年比)
3つ星 11軒(-2軒)
2つ星 48軒(-4)
1つ星 167軒(+2)
ビブグルマン 238軒(-16)
異動集計
昇格・新規搭載はミシュランのプレスリリースに明記されているが、
降格・対象外店舗については軒数・店名ともに記載されていないので、独自に集計した。
集計方法は、今年と昨年2年分の全店舗名をExcelに流し込み、関数で対比する方法で行った。
(間違いを見つけられた方は恐縮ですがご教示いただけると幸甚です)
◆新3つ星 1軒
《昇格》
かどわき(港区/日本料理)
◆新2つ星 3軒
《新規》
INUA(千代田区/イノベーティブ)
《昇格》
プリズマ(港区/イタリア料理)
銀座しのはら(中央区/日本料理)
◆新1つ星 19軒
1つ星は、19軒が追加され、19軒が星を落とした。
《新規》
ラフィナージュ
アサヒナ ガストロノーム
サンプリシテ
シオ
アルテレーゴ
あき山
霞町 やまがみ
てのしま
常 (とわ)
神楽坂 阿部
銀座ふじやま
地蔵鮨
熟成鮨 万 (ヨロズ)
匠 鮨 おわな
鮨はしもと
高柿の鮨
旬恵庵 あら垣
天婦羅みやしろ
焼鳥 おみ乃
◆新ビブグルマン 35軒
主なところでは(主に西洋系)…
ノウラ
ビストロシンバ
レ ジャルダン デ ドディーヌ
ル・キャバレー
スクレ・サレ
シュヴァル ドゥ ヒョータン
ル モンド グルマン
ラ トラットリアッチャ
ファロ
ブラマソーレ
PST 六本木 等々
その他の異動(対象外・降格など)
3つ星
(対象外へ)すきやばし次郎、鮨さいとう
(2つ星へ)臼杵ふぐ 山田屋
2つ星
(対象外へ)ミッシェルトロワグロ、海味、鮨 ます田
(1つ星へ)赤寶亭、銀座 とよだ、濱田家、蓮
星を落とした店
ル モマン、ジャンジョルジュ、Feu、アムール、イカロ、銀座 よし澤、麻布十番おざき、湖月、懐石 一文字、いと正、江戸蕎麦 ほそ川、銀座いわ、鮨こじま、すし八左ェ門、バードコート、とり喜、中華 うずまき、広尾 はしづめ、Japanese Soba Noodles 蔦
2018年5月オープンのINUAが2つ星で初掲載。
シェフのトーマス・フレベルさんは、デンマーク・nomaの研究開発部門に長くいた人だ。
東京のイタリアンに久しぶりに2つ星が誕生。
プリズマが2つ星に昇格。
2007年から2011年まで、代官山のリストランテASOが2つ星を維持していた以降、東京から消えていたイタリアンの2つ星復活となる。
江戸蕎麦 ほそ川は1つ星からビブグルマンへカテゴリ移動(新たに掲載)となった。
ラーメン蔦が1つ星から外れ、ラーメンで星を持っている店は金色不如帰と鳴龍の2軒となった。
ビブグルマンの今年の異動軒数は、昨年より落ち着いていた。
掲載件数が278軒→254軒→238軒と減り、なおかつそのうち35軒つまり約15%が新規掲載店。今年も相当な数の入れ替えで、店舗の集計はしていないが、単純計算で去年のビブグルマンから51軒姿を消したことになる。
料理カテゴリについて
今年はカテゴリの増加はなかった。
対象外となった3つ星
今年のミシュラン東京関連の報道で最も大きな話題は、3つ星「すきやばし次郎」と「鮨さいとう」が対象外となった話題だった。
一般の予約が取れなくなったためだという。
ミシュランは会員制や紹介制、住所非公開、一般の予約不可の店を評価対象にしない。
一般予約が可能な店のみを評価対象とするという編集方針はひとつの見識といえるだろう。
特に最近の10年くらいに顕著なこととして、最高の評価を与えられているものだけに一極集中が起こり、それに対応しすぎて店が疲弊する例は多い。情報の伝わる速度が速すぎるのだ。3つ星返上を宣言した店もあるし、この12月で閉店するスウェーデンのFavikenも、理由の一つにシェフの精神的な疲労があると伝えられている。
一般の予約を受けない、住所非公開、SNS投稿お断りなどの店があることは、内容は異なるが問題の根は同じところにあるように思える。
INUA新規2つ星
INUAの新規2つ星は意外だった。昨年星がつかなかったからだ。
INUAはオープンが2018年6月であったので、時期的に、昨年でも入れようと思えば可能だったのではと思う。昨年評価が見送られたことで、やはりミシュランはイノベーティブは積極的に評価しないのではと思われた。刊行がミシュランより数か月あとのゴ・エ・ミヨジャポン(2019版)ではすでに15点で掲載されており、今年のミシュランもそれに近い評価になった格好だ。
今でも評価の分かれるINUAの料理ではあるが、しかし今年は星がつくのではという予感は(個人的には)あった。
INUAはいま木村拓哉主演のドラマ「グランメゾン東京」(TBS系)で主人公に立ちはだかるライバル店の料理監修に関わっており、このドラマがミシュラン全面協力でかつ「3つ星を取る」が究極の目標とされていることから、今年はINUAには何らかの星がつくはず…と思ってはいた。
主人公の店は3つ星のカンテサンスが監修しているのに、もう片方のINUAがゼロということはドラマの話が進む時点でありえないだろうと思ったからだ。
新規2つ星は本家nomaと同じで妥当な線かなと思う。
INUAには先日行ってきた。2度目。初回訪問から1年半経っている。
日本食材と発酵技術を用いたモダンノルディック料理というユニークな立ち位置を、変わらず押し進めていっているところに好感が持てた。海外の店が日本に上陸した場合、しばらくすると日本人のゲストに受け入れられやすいアレンジ、配慮(あるいは迎合)を行うことがある。それがなかったことにほっとした。
イタリアンに久し振りに2つ星
プリズマが2つ星に昇格し、久しぶりに東京にイタリアンの2つ星が生まれたのは朗報だ。フランス料理や日本料理に比べてのイタリアンへのミシュランの厳しさは、東京の飲食店の軒数比からしても明確だったからだ。
食べログに現在掲載されているイタリアンは6422軒、うち星がついている店は27軒、同フランス料理では都内3095軒のうち星88軒となっている(2019年12月時点)。
都内のイタリアンのレベルがフレンチのそれと比べて評価できないものだとは到底思われない。イタリアンには、サローネ トウキョウやイル・プレージョなど、星がついてもよいのではと日ごろから思っている店が何軒かある。
新規1つ星
ラフィナージュ、アサヒナ ガストロノーム、サンプリシテ、アルテレーゴなど、個人的には星は来るはずと予想していたので、意外な感じはしなかった。
一方で意外だったのは、L’EAUに星がつかなかったことだった(18年12月オープン)。
東京の調査は毎年あるし、来年以降の評価を待ちたいと思う。
新たに出来た中華
今年、またこの1~2年のうちに、新たな形態の瞠目するような中華の開店が相次いだ。(先日刊行された「東京最高のレストラン2020」でも指摘されていた)
少し前だと蓮香、O2、南方中華料理 南三、ここ1年だけでもサエキ飯店、サウスラボ南方、4000 Chinese Restaurant、TexturAなど多岐にわたる。
これらの店の中で、ミシュランに掲載されているのはビブグルマンが新たについたO2しかない。
味以外の事情があるかもしれないので何とも言えないが、店舗のしつらえがカジュアルだと、実力があっても載りにくいと感じることがある。コースの価格が6000円を超える店だとビブグルマンにも入らない。あまり突っ込むのは避けるが、この価格帯のレストランの評価には、何らかの手当てが新たに必要な気がする。
調査都市の増加と縮小について
今回、横浜・川崎・湘南が特別版として更新されず、さらに「webでも掲載・更新を終了」と明記されたことには、ついに来たかという感慨を覚えた。ちなみにこれらの地域は2015年から特別版クラブミシュラン(web)のみの更新となっていた。
webのみの更新、あるいは特別版として数年に1度の刊行(北海道版や福岡・佐賀・長崎版など)にすれば、調査に関わるコストをある程度下げることができる。そうやってミシュランはこの10年で日本国内だの調査範囲を広げてきた。現在の調査範囲は18県におよぶ。
この調査の終了は、一方で調査地域を拡大していくためには必要なことなのだろう。
それでも続けられる調査地域の拡大は、一方に同じように調査地域を拡大しているゴ・エ・ミヨや最初から全世界が対象のベストレストラン50やラ・リストなどを見るにつけ、時代の必然という気がする。レストランの評価とは何なのかという意味合いも、今後大きく変わっていくだろう。
SNSにはこの時期、星を維持したシェフ、新たに星を取ったシェフの喜びの声があふれていた。
星ひとつに店の売上が左右され、中の人たちのモチベーションが上下する。
120年の歴史の上に立った評価の個々の事例には異論がある人もいるかもしれないが、
ミシュランをはじめとするレストラン評価サイトの功績は、毎年これだけの喜びをもたらすものとして、やはり計り知れないものがあると思う。
2019年版の感想は→こちら
ミシュランガイド東京2020 書籍概要
【タイトル】ミシュランガイド東京2020
【発売日】2019年11月29日(金)
【定価】3,180 円+税
【ISBNコード】978-4-904337-36-3 C2026
【発行】日本ミシュランタイヤ株式会社
【国内の掲載エリア】(2019年11月現在)
北海道、宮城、東京、富山、石川、愛知、岐阜、三重、京都、大阪、鳥取、広島、愛媛、福岡、佐賀、熊本、大分、長崎(2019年11月現在)
※横浜・川崎・湘南、兵庫、奈良は掲載終了