TOKUYOSHI(ミラノ)Cucina Italiana Contaminata

タイトルの「Contaminata(コンタミナータ)」とは、直訳では感染、汚染などという意味だ。

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イタリアの3つ星「Osteria Francescana」のスーシェフから今年独立した徳吉洋二さんから、開店にあたってのコンセプトとして、「自分としての(イタリアと日本の)コンタミナータを表現したい」という言葉を昨年聞いたときは、けっこう過激な言葉で表現するなあと思っていたけれど、今回初めてミラノのお店を訪れたら、お店の表示にもその言葉が入っていて意表を突かれた。

Francescanaのスーシェフ時代には、壊れたレモンタルトのような、形あるものや真っ当なものを変形させる料理が自分の料理のひとつの柱だった洋二さんは、新しく自分の店を出すにあたり、そういったものを「日本人的なスタイルにもっと進化させ、しかし味は100%イタリアンにするにはどうすればよいか」を考えたいと言っていた。
そして、それこそが自分の目指す場所だと。
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(Osteria Francescanaの「壊れたレモンタルト」(2012年))

今年2月にミラノ市内にできた新しい店は、グリーンを基調とする横に長いレイアウト。全面ガラス張り。
以前は寿司屋だったらしい。印象的な長いカウンターはその名残りだ。

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食器類は昨年の東京・白金「Tirpse」で行われた洋二さんの料理フェア(→こちら)で見た有田焼を中心に、日本国内の陶器や、中国・日本のアンティークも部分的に使われている。

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基本はコース(7皿100ユーロ)。予算は比較的柔軟に対応してくれそうだ。
今回はおまかせで。

MENU

ジャガイモのチップス
いわしのマリネ
シャコ+エビのスープ
GYOTAKU
スカンピ、マスカルポーネ+ケッパーのジュース
レタスを食べて育ったエスカルゴと鰻、ポルチーニのエスプーマ、ラルド、ほうれん草のソース+ぶどうジュース
オッソブーコのリゾット、サフランのソース
きのこと長時間熟成パスタ
鳩のロースト、西洋わさび+トマトとモモのジュース

お口直し;サフランの花粉の香りのシャーベット
ドルチェ;「セメントと土」

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GYOTAKU(魚拓)。
頭の部分は皿に炭で描かれている。
炭をまぶされて真っ黒なサバの中を開くと、ホタテのクリームがはさまれていて、色のコントラストが美しい。鯖だけでもこんなに複雑な色あいだったっけとはっとする。マリネされた鯖の酸味とホタテの甘み。

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スカンピ、マスカルポーネ+ケッパーのジュース
スカンピの火入れがすべてを決めるところに、マスカルポーネ。皿の脇ではなく、”みそ”のそばにあえて詰めてある。ケッパーのジュースがついていて、これは塩分と酸味を足す要領か。
ちなみに、同系色で印象的なスカンピの横の濃いオレンジの飛沫は、皿の模様だ。

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オッソブーコ
オッソブーコはミラノの伝統的な料理で、仔牛すね肉を煮込んだものだ。
付け合せにはサフランライスがお約束。
ここではこのようにアレンジされている。
ポン菓子風のリゾは食べる直前に加える。決してぐちゃっとならない、ドライなリゾだ。

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鳩のロースト、西洋わさび+トマトとモモのジュース
鳩のジュと黒トリュフを合わせた直球。
お皿は有田・李荘窯の鳩の絵の描かれた「欠けた皿」だ。

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「セメントと土」
今の店をオープンするときに、床を掘り返したときのイメージだそうだ。

今回の特徴としては、ほぼすべての料理に、一口サイズのジュースやスープがついていることがあげられる。

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シャコの隣に、エビから濃いダシを取ったスープや、エスカルゴに葡萄ジュースなど。
そのコンセプトはいろいろだ。例えば、
①シャコとエビのように単純に味のつながりがあるもの。
②鳩にトマトと桃ジュースのような、メイン食材の味を補完したり変化させたりするもの。
③エスカルゴに葡萄ジュースになると、エスカルゴが葡萄畑で採られていた歴史を知っていればわかる、高度な連想ゲームだ。

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料理に必ずそれに合った飲料がつく形式は、ジュースペアリングに似ている。
しかしシェフにとっては、ペアリングより動きのある形にして料理に合わせるための適切な量を考えて、アクセントがつくようにと、ジュースペアリングにはせずあえてこの形にしたらしい。

料理をいただき洋二さんと話していて感じたのは、日本料理あるいは日本食の感染力、影響力の強さだ。
今回の「日本的なもの」の一つは、この一口サイズのジュースだ。
おちょこを飲み干す仕草が、日本酒を飲む動作に通じると気づくお客さんもいるそうだ。

日本料理はフランス料理のように世界の中心ではないものの、フランス料理やイタリア料理をはじめ、多くの国の料理に何らかの形で入り込んでいるのを感じるという。
それも、ほぼ無意識のレベルで。

しかも、既存のものを組み合わせて新しいものを作るのは日本のお家芸でもある。
特に日本人が外国で料理を作るとなれば、日本的な部分を入れようとするのをあえて切り分けるのは、無意識から意識的なレベルに引き上げる難しい作業となる。
でもそうしないと、単純なフュージョン料理になってしまうから、と洋二さんは言う。

クッチーナ・イタリアーナ・コンタミナータを標榜していると、どうしてもお客さんから「これはイタリア料理ではない」、「○○の料理はこんなじゃない」と突っ込まれることが多いそうだ。
パスタ一つでもあるべき理想形を一人ひとりが持っていて、それこそが唯一のものだと信じるイタリア人が相手ではどうしてもそうなるだろう。それでお客さんと議論になったり、ひどいときは追い返したりしたこともあるという。

今回の料理からは、日本とイタリアの要素を混ぜて提供するのではなく、あくまでも日本とイタリアを独立した要素として提供し、融合させるのは食べ手なのだ、という強い意思を感じた。

イタリアで日本人が料理を作るというシチュエーションで考え得る選択肢には、どんなものがあるだろう。

例えば、日本人だから日本料理で勝負するか、イタリア料理に日本料理のエッセンスを盛り込んだフュージョン料理を作るか、あるいはイタリア人になりきって(なりきれないけど)イタリア料理を作るか、……などが考えられる。
そしてそれぞれどの選択肢を選んでも、思いの強さはもっとゆるやかな人の方が多いと思う。

そんななかで、イタリア料理に日本の要素を入れ、しかもそれがどっちつかずにならないようにして、味は100%イタリアンにするという、たぶん最も困難で面倒な道を洋二さんは自ら選び、ミラノで孤軍奮闘しているように見えた。

洋二さんの料理から感じる輝きは、たぶんその見えない部分の苦闘から生まれたものだろう。

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【速報】徳吉洋二氏来日イベント
上記のメニューの一部が、来週、実際に都内で食べられます!
昨日正式に情報解禁になったようなのでシェア。

9/29~10/4、伊勢丹新宿店で開催されるイタリアフェアの期間中、徳吉洋二さんと、代々木上原の1つ星イタリアン「イル・プレージョ」の岩坪滋さんのコラボ料理が提供されます。4皿程度のコースになる模様。サイトを見ると、オッソブーコのリゾットは出るみたいです。
伊勢丹新宿6F イタリアフェア
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徳吉洋二氏来店は
9月29日[火]〜10月4日[日]各日午前11時〜午後7時
期間中は必ずお店にいますとのこと。

【追記】行ってきました。記事はこちら→Italia incontra Giappone 徳吉洋二さん×岩坪滋さんコラボイベント@伊勢丹

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Ristrante TOKUYOSHI
Via San Calocero N°3
20123 (Mi)

公式サイト→こちら
予約は→こちら(メールアドレスのリンク有り)
TEL +390284254626
火~土:19:00~22:30
日:12:30~15:00 19:00~22:30
月:定休

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「専門料理」7月号は、RISTRANTE TOKUYOSHI紹介6ページ分。↓

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